サンダース大付属高校二年の10月末。つまり、ハロウィン・パーティ - いもげばこ−二次元裏img@ふたば過去ログ保管庫


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16/10/30(日)02:11:36 No.387717819 del
 サンダース大付属高校二年の10月末。つまり、ハロウィン・パーティのちょっと前。
 アタシは正直自分の衣装どころではなかった。
 隊長が持ってきてくれた衣装はまぁまぁおしゃれでマニッシュ。
 吸血鬼、と言われればようやく吸血鬼なんだなって分かる程度にの裏地の赤いマント以外は、そのまま歩いていても……いや、流石にこれで街を歩く気にはなれないが……比較的普通の服だった。
 襟元にたっぷり布を使った襟巻。短いハーフパンツは太もものラインが見えて、アタシは正直嬉しくなかった。筋張ってる気がして、あんまり綺麗じゃないと思っていたからだ。
 ブラウスは真っ白で、マントの表地と同じ夜空の色のベストはなんだか胸を強調するライン。
 だけどアタシのことはどうでもいい。心底どうでもいい。別に見せたい相手がいるわけでもない。いなくもないが見せても仕方ない。
 問題は。
「ねぇ、ちょっとこれどう思う?」
「どうって」
 アリサが不安げに上目遣いでこっちを見て、アタシは慌てて目を逸らした。
16/12/04(日)02:56:57 No.387717819
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キタ━━━(゜∀゜)━━━!!
16/10/30(日)02:11:58 No.387717869
 隊長、何考えてるんだ!
 アリサの方は、多分悪魔がモチーフなんだと思う。それも神父さまを誘惑する類の、いわゆるサキュバス。
 ウレタンにフェルトを貼った角に申し訳程度のかぼちゃの飾り。背中にビニールで出来たコウモリの羽根を背負っているのはいい。
 薄い紫の前開きベビードールはスッケスケ。脚はタイツとブーツの合体したみたいなハイヒールで(こういうのどこで見つけてくるんだろう)、太もものあたりに大きくスリットが入っている。それを留める編み上げがセクシー。
 どうしようもないのがショーツで、V字に食い込んだブーメランパンツは、これなら何も履かないほうがいっそ健全って感じ。
 そんなきわどい衣装を着て、アリサはいつもと同じようにちょっと背を丸めてぬぼっと立っている。
「……すげぇな」
 アタシは他に感想がない感じで答えた。
 ちょっとポーズのひとつも取ればもうちょっとセクシーなんだろうけど、全くいつも通りなのがアリサらしくて、アタシはすこしおかしい。
16/10/30(日)02:12:13 No.387717891
「これ見てよ。ちょっとヤバくない? パパには見せらんないなぁ……」
 アリサはそう言って無防備に股のところを見せてくる。きわどい食い込みに、アタシは目をそらした。パパにも見せられないようなものを平気で見せてくるアリサに、アタシはすこしイラッとする。
 いつもこうだ。
 アリサの信頼と、友達としてのじゃれつきが、アタシを苛立たせる。
 目の前でくるくる回るアリサのビニールの羽根がばしばしぶつかって、アタシはそれにかこつけて少し離れた。やめろ、追ってくるな。
 アタシが吸血鬼よろしく、ちょっと不健康なアリサの首筋にかみついてキスしてみせたら、こいつはどんな顔をするだろう。
 ちょっとびっくりして、冗談に紛らわせてくれるだろうか。
 なにすんのよ、って怒ってくれるだろうか。
 それとも、アタシのことを知ってしまうだろうか。
 知ってほしいと思うアタシがいる。全部話して、別に好きになって欲しいとまでの贅沢は言わない。せめてあんまり目の毒な格好はしないでくれ、とでも言えればどんなにいいだろう。それを話しても今と同じような友達でいてくれるなら。
16/12/04(日)02:56:57 No.387717819
1477761096194.jpg-(148057 B)
キタ━━━(゜∀゜)━━━!!
16/10/30(日)02:12:48 No.387717966
 でもずっとウソをついている。
 正体を隠している。
 狂おしいほどに好きな女の子を前に涼しい顔を作って、大事に、自分だけの思い出に沈めている。独りの夜にそっと自分を慰める思い出にしている。何も産まない、思い出の泥濘。そこには無数の思い出が沈んでいて、いつかアリサの笑顔もそこに沈むのかと思うと血が冷えていくのを感じる。
 ずっと隠していたい。隠したまま消えていきたい。アリサが最後に見るのが、アリサが見たいアタシであるように。
 そんなことを考えている自分が。
 気持ち悪い。自分で自分を見て笑っていられる自信がない。
 ハロウィンは、おばけが堂々と人前に出られる日だ。死者が帰ってきて、家の門を叩く。トリック・オア・トリート。そんな理不尽な選択を堂々と迫ることができる。
 おばけだって、一年に一回はその正体を明かせるのに。
「アタシは化けものにもなれないのか」
「へ? なんか言った?」
 しきりに股間を気にしているアリサが、ぽかっとこっちを見る。
 そのエロ特化みたいな衣装と、エロさのかけらもない表情のギャップに、アタシは泣き笑いに笑った。
16/10/30(日)02:13:06 No.387717999
「ところでさぁ。その……パンツ。それ、その、処理とかしてんの?」
「剃られた」
「誰に」
「隊長。だからなんかちくちくして……」
 おもわずまじまじと覗き込んでしまって、アリサはばっと両手で股を隠した。
「じろじろみないでよ! すけべ!」
「え? うわっ!」
 アタシはぱっと顔をそらして赤くなる。しまった。不自然だったかな。笑って軽口でも叩いたほうがアタシらしかったかな。アタシは口の端を上げて笑ってみせると言った。
「すけべって、そんな格好しても、ハロウィンは男子艦来ないだろ。プロムの時くらいしか」
「バッカね。タカシが来るならこんな格好しないわよ。自殺もんよ。こんなの」
「タカシね」
「そ」
 よかった。上手くごまかせた。
 アタシはほっと息をついた。ちらちら見えるおへそと太ももからそれとなく目をそらす。
「なぁ、確か、カボチャっぽい色のホットパンツ持ってたろ。一回だけしか見た記憶ないけど」
16/12/04(日)02:56:57 No.387717819
1477761096194.jpg-(148057 B)
キタ━━━(゜∀゜)━━━!!
16/10/30(日)02:13:22 No.387718039
「へ? あぁ、よく覚えてるわね」
「あれ、履いたら? いくらなんでもそのパンツはちょっと、その……」
 目に毒だ。
「ナイスアイデアね。隊長に文句言われたら、ナオミがそうしろって言ったって言うわ」
「……まぁいいけど」
 アリサはごそごそと衣装ケースを引っ張り出して、カラシ色のホットパンツを履いてみせた。
「どう?」
 アリサはくしゃっと笑ってくるりと一回転。
 アタシは「いいんじゃない?」と気のない感じで言ってやった。アリサはぷっと膨れる。かわいいとでも言ってほしかったのだろう。アタシはそう言って笑って、角の生えた頭を小突いた。
 どう? か。
 それはアタシが聞きたいよ。
 どう? アリサ。
 アタシはうまく笑えてるかな。
 お前の知ってるアタシでいられてるかな。
16/10/30(日)02:13:38 No.387718082
 ハロウィン。
 一年に一回、おばけが正体を明かせる日。アタシは嘘をつき続ける。

 ◇◆◇
16/10/30(日)02:14:01 No.387718133
「だいたい、いっっつも急なのよ!」
 アパートのアタシの部屋で、大学一年生のアリサがぶうぶうと文句を並べた。
「隊長が急なのは解ってるわよ。でも何? 幹事は西住まほでしょ? 何やってんのよ!」
 大学選抜チームでハロウィン・パーティをやること自体は、結構前に聞いていた。
 アタシたちは、苦労して潜り込んだその栄光あるチームの一員として、それに出席することになっている。ダージリンさんの予告通り、アタシたちはスーパーパーシングを任された。車長はアリサ。
 ケイ隊長(元、だ)や”大”ダージリンさん、西住まほやノンナとカチューシャほど実績があるわけじゃないから、大学戦車道を頑張った結果の選抜入りで、アタシたちはそれを誇りに思っていた。
 その選抜でのハロウィン・パーティは、どうも幹事を買って出た西住まほの仕切りで動いているらしいのだが、そこからの衣装指示が来たのが、ついこの間。パーティまではそう間がない。
「”魔法と怪奇の国”か」
 アタシは回ってきたプリントをひらひらと振った。
16/10/30(日)02:14:19 No.387718172
「あの鉄仮面、こんなことやるんだなぁ」
「みほや逸見がびっくりしてたじゃない。誰かの入れ知恵でしょ。ひょっとしたら隊長とか」
 この隊長、は、島田隊長ではなく、ケイ元隊長のこと。やっぱりしっくりくる。
 とにかく、衣装指示が来たのが遅かったせいで、いまさら気の利いた衣装も用意できず、アタシたちは以前のハロウィンパーティで使った衣装を使いまわす作戦を思いついたのだ。
 もちろんあちこち直す必要はあるが、アタシは裁縫はそう嫌いじゃない。ジグソーパズルとか、プラモデルとか、黙々とやる作業はぜんたい好きだった。
 その理由は、もともとは、それをやっている間”自分”を忘れることができるから、だったけど。
 去年使った衣装はデザイン的にコンセプトに合わなかったから、アタシたちが高校二年の時の衣装を使いまわす。
 アタシはちょっと背が伸びたし、筋肉がついたから少し手直しが必要だろう。裏地の赤いマントの吸血鬼。
 一方のアリサは、忘れもしない。悪魔の衣装だ。
 ベビードールのサイズはほとんど変わっていなくて、そこもアリサの機嫌を悪くする一因だった。
16/10/30(日)02:14:39 No.387718228
 一式衣装を身に付けて、アリサはどかっと無防備にアタシのベッドに腰を下ろす。
「そういえばさ」
 アリサが思い出したように、裁縫セットを出したアタシに言った。
「これ着たとき、アンタずーっとアタシのそば離れなかったよね」
「あ、あぁ……」
 気付いてた? とばつが悪く効くと、アリサは肩をすくめた。
「そりゃ。意味は分かんなかったけど」
 ぎくりとする。
 胸がどきどきして、うまく笑えない。
 高校を卒業する時。
 アタシは付き続けてきた嘘を、つけなくなった。
 思い出の泥濘に沈めるには、アリサはアタシの中で大きくなりすぎていて、彼女の存在はアタシの心を溢れさせてしまった。
 もうだめって思ったのに、それでもまだ生き汚く生きている。
 それは、アリサはぶちまけられたアタシの話を聞いてくれて、共感はしないまでも理解してくれて、そしてそれでなお、一緒に居てくれているから。
 まるで夢のようで。
16/10/30(日)02:14:55 No.387718261
 アリサはあくまで信頼と友情をもって接してくれている。
「わたしを惚れさせてみなよ」
 と、アリサは言った。だからまず自分を好きになりなさいって。それはアタシにはとても難しいことだったけど。
 だから、アタシはどういう顔をしたらいいかわからなくて、笑おうかどうしようか考えた。
「こら」
 アリサがアタシの目の前でぱちんと指を鳴らす。
「別にわたしは悪く思ってないから、無理に笑おうとしないで」
「あ、あぁ」
「そうかぁ、って思っただけ。悪い気はしないわよ。本当。わたしの魅力ってやつも捨てたもんじゃないなって」
 アリサが得意げに鼻を鳴らして、アタシは思わず笑った。
 アリサも、くしゃっとした笑顔をみせてくれる。
「そうそう。笑いたいときに笑ってよ。わたしは知ってるんだから」
「うん」
 もう嘘をつかなくてもいい。
 アタシはマントのほつれたところを直し終わって、それを脇にどかした。
16/10/30(日)02:15:13 No.387718299
「じゃあ、首にかみついていい?」
「調子に乗るな」
 アタシがおどけて言うと、アリサはポコンとアタシの頭をはたいて笑った。

 ハロウィン。
 一年に一回、おばけが正体を明かせる日。
 だけどもう、おばけを羨むことはない。
 アタシはもう化け物じゃない。いつだって正体を明かせる。アタシの正体を知ってくれている人がいる。
 そう、目の前の小さな悪魔が教えてくれたから。
 だからもう、おばけを羨むことはないんだ。

 当日のハロウィン・パーティで、アリサの隣に立つのが楽しみだ。
 きっと以前とは違う気分でそこに立てるだろう。

END
16/10/30(日)02:15:59 No.387718392
su1624140.txt
てきすとー

ハロウィン3
1と2はテキストにはいってるー
16/10/30(日)02:23:46 No.387719312
あれでホットパンツ無しとか淫魔過ぎるだろ…しかも剃っただと…?
アリサのデリケートゾーンに…?指と剃刀が…?
あの野郎許せねえ!同じことを片想いの相手にされる呪いを食らえ!!
16/10/30(日)02:25:14 No.387719459
アリサ罪作りな女過ぎるな
16/10/30(日)02:25:55 No.387719529
>あの野郎許せねえ!同じことを片想いの相手にされる呪いを食らえ!!
ダージリンに剃毛されるおケイさん
16/10/30(日)02:27:07 No.387719680
(私が剃りたかったのに私が剃りたかったのに私が剃りたかったのに私が剃りたかったのに)
16/10/30(日)02:27:57 No.387719775
前回だか前々回でチョビが鉄仮面じゃない!って言ってて今回鉄仮面呼ばれてるの好き
チョビとかみぽりん相手じゃないとまだ硬いんだなぁとか距離感わかって
16/10/30(日)02:28:20 No.387719813
同じの着るってことは、また剃るのかな…
16/10/30(日)02:31:33 No.387720166
ホットパンツありが前提なら剃らなくていいんじゃね?
16/10/30(日)02:33:37 No.387720399
そこは何かにかこつけて剃る剃らないで揉めてくれるといい
16/10/30(日)02:36:03 No.387720638
いや…そうか…わかった
わかった気がする
二年間の間に前線は進み同じ丈の筈のホットパンツでもちょっと見えるくらいになっちゃってるんだ
そしてそれを指摘されて気付くんだ…
16/10/30(日)02:39:14 No.387720950
>前回だか前々回でチョビが鉄仮面じゃない!って言ってて今回鉄仮面呼ばれてるの好き
>チョビとかみぽりん相手じゃないとまだ硬いんだなぁとか距離感わかって
お姉ちゃん柔らかくなっては来てるけどまだ親しい数人にしかそういう面を見せれてないのかもね
こういう1つの物事を色々な視点から見る手法はすごく好き
16/10/30(日)02:39:27 No.387720978
それだ!
「アリサ、その、ちょっと見えてる……」
「え?」
「そ、そそそ、剃ってやろうか……」
「自分で剃る!!」
16/10/30(日)02:40:50 No.387721100
>前回だか前々回でチョビが鉄仮面じゃない!って言ってて今回鉄仮面呼ばれてるの好き
お姉ちゃん、まだ二年生だしな
みんなに理解されてチョビ以外にも優しく見えるようになって、それにチョビが喜びつつもちょっとさみしくなったりするのはもうちょっと後だろう
16/10/30(日)02:42:12 No.387721224
体毛って気付かぬ間に前進してたり濃くなったりするよね
髪は基本薄くなるだけなのに
16/10/30(日)02:44:20 No.387721437
きたのか!
16/10/30(日)02:48:20 No.387721797
まああんなもん着せて人前に出したらそりゃ不機嫌にもなるわね
16/10/30(日)02:48:59 No.387721847
アンチョビ[ハロウィン2016]来なかったな…
来ると思ったのに…
16/10/30(日)02:59:28 No.387722706
アリサは片親だから、パパ、大事に育ててそう
16/10/30(日)03:00:23 No.387722777
>きっと以前とは違う気分でそこに立てるだろう。
(うわっ!やばい!やばい!エロ過ぎる!バカ笑うな!私の理性はもう限界なんだ!やめろ!からかうな!あああああああ!!!!)
16/10/30(日)03:02:34 No.387723008
>(うわっ!やばい!やばい!エロ過ぎる!バカ笑うな!私の理性はもう限界なんだ!やめろ!からかうな!あああああああ!!!!)
そこに「(隠さなくても)いいよ」って言われて理性が飛んでどつかれるナオミさん
16/10/30(日)03:05:49 No.387723355
起きててよかった…ナオミも生きててよかったな…
16/12/04(日)02:56:57 No.387717819
1477761096194.jpg-(148057 B)
キタ━━━(゜∀゜)━━━!!
16/10/30(日)03:06:54 No.387723486
>「(隠さなくても)いいよ」
これ普通のシーンなのにナオミヴィジョンだともう唇の動きしか見えないやつや…
しかもなんかちょっとぼかしかかってるやつや…
16/10/30(日)03:21:46 No.387724782
このあとちゃんと幸せが待ってるから、安心
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16/10/30(日)03:21:48 No.387724785
いいものが読めた…
16/12/04(日)02:56:57 No.387717819
1477761096194.jpg-(148057 B)
キタ━━━(゜∀゜)━━━!!


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