SS「秋の夕暮れ」秋の日は釣瓶落としなんていうけれど、秋という季節 - いもげばこ−二次元裏img@ふたば過去ログ保管庫


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16/11/04(金)00:53:15 No.388715263 del
SS「秋の夕暮れ」

 秋の日は釣瓶落としなんていうけれど、秋という季節自体がつむじ風みたいで、しみじみ味わっている暇もないくらいにあっという間に通り過ぎてしまう。
 戦車道の訓練を終え、長年支えてくれていた愛車に水をかけてやっていると、したたった水が小川になって流れる後を、追いかけて伸びる影法師がずいぶんと長くなっていることに気づいた。
「秋も深まってきたね」
「うわっ!」
 不意打ち気味に背後から声をかけられて、つい声が出てしまった。
16/12/08(木)11:20:41 No.388715263
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キタ━━━(゜∀゜)━━━!!
16/11/04(金)00:53:40 No.388715368
「なんだ、ミカ、いたの」
「ミッコが呼んでいたからね」
「あたしが? 呼んでないよ」
「だれかを呼ぶのに声を出す必要なんてないんだよ」
 継続高校、うちの学校の戦車道チーム隊長であるミカとのつきあいは長いけど、いまだにいっていることがよくわからなくなることがある。
「だったらミカは声を出さずに、だれかをここまで来させることができるの?」
「強制じゃないよ。来る気になってもらうのさ」
「なんだかよくわからないけど、結局、できるのかできないのか、どっち……」
「あ、いたいたー。ちょっとミカー。進路調査票の提出期限とっくに過ぎてるって先生怒ってたよー」
 あたしがいいかけたところで、アキが小さなおさげを揺らしながら小走りで駆け寄ってきた。
16/11/04(金)00:54:02 No.388715446
「あきれた、それ何回分だよ」
 アキから手渡された書類を両手のなかで山にしても、ミカは涼しい顔だ。
「さあ、どれくらいだろうね」
「ミッコ、聞くだけ無駄だよ。ミカったら、これまで一回も提出してないんだから」
「げ。今までよく見逃してもらってたもんだね」
「形式はそれを必要としているひとのものだからね。流れる水を器に留めようとしても意味のないことくらいみんな承知しているんだよ」
「んー、よくわかんないけど、どうせミカにいったって出さないんだから、とりあえずいうだけいってるってこと?」
 あたしなりの解釈を言葉にしてみると、なんだかミカは誇らしげに笑みを浮かべた。
「そんなわけないでしょ」
 だがアキは辟易顔だ。
16/12/08(木)11:20:41 No.388715263
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キタ━━━(゜∀゜)━━━!!
16/11/04(金)00:54:19 No.388715490
「ミカが艦を空けてることが多いから、これまでまともに通知が届いてなかっただけじゃないの」
 この夏以来、もともと風来坊な気味のあったミカが、さらに輪をかけて留守がちになった。
 行き先は決まっている。黒森峰だ。戦車道の盛んな学校で、長らくうちとはライバル関係にあると見てもらっていたが、それはひいき目で、実のところは負け越している。そこの隊長さんをミカはよくおちょくりに行っている。
「本音の交流だよ。ひとはね、予想もしていなかったことに出会うと、自分を隠していられなくなるのさ」
「それだと、本音を口にしているのは、あちらさんだけになるんじゃ……」
 とてもじゃないが、驚かされたりして、素をさらけ出しているミカなんて想像もつかない。
「そうでもないよ。まほさんは私の予想を軽く超えてしまうひとだからね」
『えー』
 あたしとアキの声が重なるのも仕方ないところだろう。
16/11/04(金)00:54:35 No.388715569
「それでミカは卒業したらどうするつもりなの?」
 アキは体を前に迫り出させて突っ込んできた。
「そんな先のことはわからないさ」
「先ってもう来年の話だよ」
「来年のことをいうと鬼が笑うというよ」
「一年後の話をしてんじゃないんだよ。半年もしない先だよ!」
 のらりくらりとしたミカの口振りに、とうとうアキが爆発した。
「そうだね、どちらにせよ、ひとついえることは」
「いえることは?」
 そんな憤激を前にしてもミカの様子は変わらない。それどころか、一層軽やかな手つきでアキを手玉にとっているように見える。
「戦車道を続けているだろうね」
 期待に身を乗り出していただけに、肩すかしを食ってアキが大きく体勢を崩した。それくらいミカと戦車道は切っても切り離せないものだという認識があたしたちにはある。
16/12/08(木)11:20:41 No.388715263
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キタ━━━(゜∀゜)━━━!!
16/11/04(金)00:54:51 No.388715629
「じゃあ、やっぱり大学に行くんだ」
「どうだろうね」
「だって学校じゃないと戦車には乗れないじゃない。社会人チームもあるけどさ」
 正直高校生からすれば企業内の戦車道チームの内情はまったく想像もできない。
「どうしないといけない。こうじゃないといけない。戦車道はそんな窮屈なものじゃないよ」
「でも、個人で戦車を持つなんて、そうそうできるもんじゃないだろ。それこそ西住流だとどうかわかんないけど」
 あたしだって自分で戦車を持てたらどんなに素敵だろうと思うけど、もろもろの維持を考えたらとても手が出るものじゃない。
「そうだ、黒森峰の隊長さんはどうなの?」
 ふとアキが思いついたようにたずねた。
「まほさんはまほさんの道を進むさ。あのひとの目は頑ななのさ。それは強さでもあり儚さでもあるし、獰猛さでもあり美しさでもある」
「あのひと、国際強化選手だもんねー。じゃあ、ミカが大学行かないって知ったら寂しがるんじゃない?」
「まほさんは寂しがったりしないよ。怒るだろうけどね」
「怒る? どうして?」
「彼女は一途だからさ」
16/11/04(金)00:55:10 No.388715698
「えー、わかんないよ。ひたむきだから、ミカが別の方に目を奪われてるのが許せないってこと?」
 しばらくアキは腕を組んで首を傾げて考え込んでしまったが、やがて顔をあげてつぶやいた。
「それってやきもちじゃない?」
 するとミカは珍しく大きく目を見開いてみせた。
「やきもちか。それは、ふふふ、素敵だね」
 そうしてしばらくその驚きを堪能したかと思うと、いかにも嬉しそうに顔を一層綻ばせた。
「なに、やきもち妬いてほしいの?」
「そうじゃないよ。まほさんがやきもちを妬いているところを見ていたいのさ」
 ポロンとひとつミカがいつも手放さないカンテレを爪弾いた。
「えー、わかんないよ」
「趣味がわるいなあ」
 アキとほぼ同時に感想が口をついたが、その意味するところはずいぶんと違う。
 はっとして口を抑えてみても後の祭りだ。
16/11/04(金)00:55:34 No.388715787
「え?」
「ミッコはわかっているみたいだよ」
 直感の鋭いアキと、底意地のわるいミカが聞き逃してくれるわけがない。
「えー、どういうことよ? ミッコ、ミカのいった意味がわかるの?」
 即座にアキが詰め寄ってくる。
「うそだよ。ミカが適当いってるんだって」
「じゃあ、さっきの趣味がわるいってなに? どういう意味なのよ?」
「それは、ほら、アレだ……」
 けど、そううまく、気の利いた切り返しが浮かぶわけがない。あたしはミカじゃないんだから。
 そのとき不意にピンとくるものがあり、目線を移してみると、案の定ミカの姿は忽然とかき消えてしまっていて、その場には書類の束だけが残されていた。
「やられた……」
「なによ、ミッコ、そんなふりしたってごまかされないんだからね! もー! ミカとミッコふたりして、わたしをのけものにして!」
 懸命に頭のなかで、なんとか相棒をなだめる言葉を探しているうちにも、顔を真っ赤にして頭から湯気を出しそうな勢いでアキはかんかんに怒りをあらわにしていた。
 癪に障る話だが、そんなアキの姿を見ていると、ミカのいったことに多少なりとも共感できた。
16/11/04(金)01:24:01 No.388721579
ミカらしいな
16/11/04(金)01:24:52 No.388721730
未来には大切なことがたくさん待っているんだよ…
16/11/04(金)01:27:35 No.388722195
風と共に去りぬ
16/11/04(金)01:29:08 No.388722463
ズルいぞミカ!
16/11/04(金)01:29:47 No.388722580
>ミカらしいな
この飄々としてる感じいいよね…
16/11/04(金)01:30:38 No.388722740
かわいいよね…
16/11/04(金)01:31:43 No.388722906
のらりくらりとまるで風のよう
16/11/04(金)01:32:55 No.388723117
ミッコが困っとる!
16/11/04(金)01:37:06 No.388723790
なんかすごく想像通りな三人だ…
こんな感じで三人一緒に居るって想像しやすいよね
16/12/08(木)11:20:41 No.388715263
1478188395488.jpg-(42685 B)
キタ━━━(゜∀゜)━━━!!


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