SS「茜」(どうしてこうなったのでしょう……)放課後のひと気のない - いもげばこ−二次元裏img@ふたば過去ログ保管庫


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16/11/08(火)01:40:45 No.389579283 del
SS「茜」

(どうしてこうなったのでしょう……)
 放課後のひと気のない教室で、私、秋山優花里は絶対的窮地の関頭に立たされていました。
 眼前に対峙するのは武部沙織殿。普段は穏やかにたくわえられているやわらかな眉を中央に寄せ、ものものしい表情で私を真向かいから見据えておいでです。おまけにその手には剣呑極まりない、見るも鮮やかな紅に染まった道具を携えていらっしゃいます。
 私はそれが振るわれるのを、身を固くして待ち構えるしかないのでした。
16/12/09(金)09:05:49 No.389579283
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キタ━━━(゜∀゜)━━━!!
16/11/08(火)01:41:10 No.389579338
 ことの起こりは、半時間ほど前のことでした。
「ゆかりんてメイクしないの?」
 一日の正課を終えた放課後、本日は戦車道の訓練もお休みということもあり、みなさんと夕飯をご一緒することになりました。御用のある西住殿たちより先に、私たちはあんこうチームの集結をいまや遅しとお待ちしておりました。
 武部殿は最近戦車についてのメモをおとりのようで、それに私も微力ながらお手伝いさせていただいております。
 イギリスの巡航戦車チャレンジャーについてひとくさり解説を終えたところで、武部殿はやにわに先ほどのような質問を投げかけてこられました。
「メイクってメイクですかあ?」
「そう、メイク。マキアージュ。お化粧」
「えええええええええええええええええ!」
「ええ!? なにそのリアクション! わたし、そんなおかしなこといった?」
「す、すいません。でも、あまりにも、これまで考えたこともないお話でしたので」
「待って、ゆかりんてば、じゃあ、ほんとにぜんぜんしたことないの?」
 武部殿はどんぐり眼をさらに大きく見開いて驚かれていました。
16/11/08(火)01:41:26 No.389579378
「はい。なにしろ、手もとのお金は、ほとんど戦車関連につぎ込んできましたので……」
「ええー、もったいないよー。ゆかりん、肌もきれいだし、ぜったいメイクしたらばっちり決まっちゃうよ」
「そんな。私なんて、この鳥の巣頭ですし、目も垂れていますし、口も大きいですから、とてもお化粧なんてできるような……」
「これ!」
 ビシッという音をたてて、武部殿の手刀が私の額に突き立てられました。
「自分を卑下しちゃいけません!」
 もちろん本気ではありませんでしたが、真剣なお叱りでした。
「いい、ゆかりん。女の子はね、だれだってきれいになる権利があるの」
「け、権利ですか」
「そう! 男の子がかっこよくなるのと同じで、女の子はみんな体のなかにかわいいエッセンスを持ってるの。これを磨いて輝かすことができるのは、女の子だけの特権なんだから。自分を卑下するっていうのは、かわいくなるのをはじめからあきらめちゃって、その権利を捨てるようなものなんだよ。母さん、そんなの許しませんよ!」
 腰に手を当てて諄々と説く姿は、実に貫禄をお持ちです。
16/12/09(金)09:05:49 No.389579283
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キタ━━━(゜∀゜)━━━!!
16/11/08(火)01:41:42 No.389579432
「だいたいさ、ゆかりんだって、お化粧してかわいいっていわれたいでしょ? でしょ?」
「そ、それは……思います……けど……」
「ほらー、でしょー」
 我が意を得たりとばかりに大きくうなずく武部殿はいかにも満足そうです。
「じゃあさじゃあさ、ちょっとためしてみようよ! ファンデーションから……だと時間が全然足りないか。そうだ、ルージュさしてみよ! ゆかりん唇薄くてかわいいから、それだけでぐっと大人な雰囲気になると思うんだ!」
 こんな際にお断りする言葉の持ち合わせは、生憎私にはありませんでした。
16/11/08(火)01:41:58 No.389579492
 通学かばんから取り出された小振りのポーチには、たくさんのお化粧道具が入れられていて、私はすっかり度肝を抜かれてしまいました。
「いついかなるときでも、万一の際に備えて、メイク道具を用意しておくのは女子の心構えだよ」
 大洗は女子校ですが。
「それはいいっこなしだよー」
 いいながら出してくださったのは、一本の口紅と小さな筆でした。
「リップブラシ。スティックを直接は、さすがにいきなりひとにしてあげる自信はないからね」
 口紅といえばスティックタイプのものとばかり思っておりましたから、少々面食らってしまいました。
「それじゃあ、いいかな? ゆかりん」
 間の机を移動させ、私と武部殿は椅子に座った姿勢で正面から向き合っておりました。
16/12/09(金)09:05:49 No.389579283
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キタ━━━(゜∀゜)━━━!!
16/11/08(火)01:42:14 No.389579541
「はい! 不肖秋山優花里、この段になりましては逃げも隠れもいたしません! どうぞ武部殿、ご存分に!」
「決闘するんじゃないんだからさ……」
 困ったような笑顔を浮かべ、そして、十分口紅を含ませた筆先がまっすぐ私の唇に迫ってまいります。
「じゃあ、失礼しまーす。ちょっとくすぐったいかもしれないけど、大丈夫?」
 湿り気を帯びた筆の感触が少しひやりとしましたが、特にそれ以上に
「ええ、問題ありません」
「よかったー。じゃあ、ちょっと我慢しててね」
 武部殿はご自宅で使っておいでの、臙脂のアンダーリムの眼鏡を装着し、私の唇を筆で丁寧になぞっていってくださいます。
 その真剣な面持ちには、嬉しい反面、少なからず恐縮してしまいます。
16/11/08(火)01:42:30 No.389579581
 それにしても、先ほどは武部殿の勢いに圧されたとはいえ、どうして、あんなことを口にしてしまったのでしょう。
 いくら飾ってみたところでかわいいといってくれるあてどころか、見てもらう相手さえいませんのに。
 つい
「ひゃん!」
「わっ! ごめーん、ちょっと力入れすぎちゃった?」
「い、いえ、なんでもありません……。申し訳ありません……」
 今のは、なんだったのでしょうか。突然、筆の動きがくすぐったく、いえ、まるで冷たい電流が全身に流されたような感触が走りました。
 一度意識しはじめると、唇を筆でなぞってもらうという行為が、急に肌を刺激しはじめました。
 さらに胸がドキドキと打ちだし、息苦しささえ覚えてきました。
 それだけではありません。
 一心不乱に私の唇に紅をさしてくださっている武部殿の前髪が、私の鼻先をくすぐる感触と、それにのって運ばれてくる甘い香りは、次第に心の奥底に眠っていたある感情を呼び覚ましてきました。
16/11/08(火)01:42:49 No.389579646
 思えば、戦車しか知らず、これまで友人と呼べる方のひとりもいなかった私が、チームの一員として屈託なく打ち解けられたのは武部殿のおかげでした。
「もう少しだからねー、ゆかりん」
 はじめてのあだ名をくれたのも武部殿で、おかげでみなさんからも下の名前で呼んでいただけるようになりました。
 サンダースへの偵察を行った際にも、だれにも告げずでかけたにもかかわらず、自宅にまで足を運んでくださったのも武部殿の発案によるものでした。
 アンツィオとの対戦の直前、みなさん同様、私も部屋にお招きくださいました。
 私がみなさんと親睦を深めるきっかけはすべて武部殿がお膳立てをしてくださったのです。
 そして、今度は、私は、武部殿の手で、女にしてもらおうとしています。
16/11/08(火)01:43:18 No.389579722
「はーい、完成ー!」
「あっ……」
 筆の離れる感触に小さな声が洩れます。
「苦労したけど、その分自信作だよー。はいどうぞ」
 向けられたコンパクトの内には、唇に紅を入れ、そしてそれ以上に頬どころか耳まで朱に染めた私の顔がありました。
「うん、とってもかわいいよ、ゆかりん!」
 まるでわがことのように喜んでくださる武部殿の笑顔。私だけに向けられた笑顔を拝見すると、胸の高鳴りはもう抑えきれないほどに速く、そして強くなっていきました。
「はい、とてもお綺麗です……」
「んもー、口紅だけなんだからそんなに変わるわけないでしょ。でも、自分で自分がわからないくらいびっくりしちゃった?」
 武部殿は私自身を見た感想だと思っておいでです。けど、私の目は、もう鏡などとらえておりません。
「た、武部殿……」
「ん? なになに?」
 ほころばせたままの表情の武部殿に、私は思い切って打ち明けました。
「私も、私ももっと綺麗になりたいです。かわいい服を着て、お化粧もしたいです。ですから、ですから、私の練習を御覧いただけますか?」
 強く結んだ唇からは、口紅の、武部殿の口紅の味がじんわりとにじんできました。
16/11/08(火)01:55:59 No.389581524
良かった…
直接行為なくても興奮する話だった…
16/11/08(火)01:56:33 No.389581593
きたのか!
16/11/08(火)01:58:25 No.389581830
エッセンスを醸し出しすぎる…
16/11/08(火)02:00:11 No.389582062
>そして、今度は、私は、武部殿の手で、女にしてもらおうとしています。
いい…
16/11/08(火)02:04:47 No.389582592
お化粧で変身は女の子の基本だもんね
16/11/08(火)02:08:12 No.389582917
キテル…
16/11/08(火)02:12:54 No.389583403
キテルネ…
16/11/08(火)02:18:23 No.389583915
キテマス…
16/11/08(火)02:18:23 No.389583917
ゆかりんをも溶かすさおりんの女子力しゅごい…
16/12/09(金)09:05:49 No.389579283
1478536845233.jpg-(50857 B)
キタ━━━(゜∀゜)━━━!!


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