「ありすくん、文香をお願いね」奏さんのその声に、ほんのわずかばか - いもげばこ−二次元裏img@ふたば過去ログ保管庫


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16/11/21(月)03:18:13 No.392085680 del
「ありすくん、文香をお願いね」

奏さんのその声に、ほんのわずかばかりのイタズラ心を感じてしまう自分は、流石に十二歳という年の頃にして人を穿って見てしまう気性を持ちすぎだろうかと橘ありすは思う。
考えてみれば基本的に奏はどこか人を魅惑的に誘うような語りかけが特徴の女性な気がするし、平時ならばむしろ自分と同じ十代にしてそれほどの余裕と妖艶さを持つ彼女の振る舞いに憧れと羨望を覚えるのだが

なにしろ今は平時ではない……というと、何か大袈裟な事件が怒ったように聞こえるだろうか
だが実際、ありすの中では全くもって今は平時ではなく、むしろかつてないほどに緊張と焦燥いう名の見えない糸は身体中をガチガチに縛りつけていた。
16/12/10(土)04:22:26 No.392085680
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キタ━━━(゜∀゜)━━━!!
16/11/21(月)03:19:39 No.392085753
心音がうるさくて、奏に聞こえてるんじゃないかと思うし、自分の手が震えてるのが、近づき始めた冬の寒さのせいなのかもよく分からない
エアコンで室温はきちんと調整はされているはずなのだが…

……ただ一つだけ、これだけは確信を持って言えることがある
レッスン終わりで疲労しているとはいえ、プロジェクトルームのソファーで
本を読み始めたにも関わらず、五分も経たないうちに
歳が離れているとはいえ自分というーーー僕という“異性”が隣にいるというのに

「すぅ…」

こんな風に眠ってしまう文香さんは、無防備が過ぎるーーーということだ。
16/11/21(月)03:21:11 No.392085822
φ

オータムフェスが終わった頃から、僕は文香さんを目で追うようになっていた。
それは単純にプロジェクトのメンバーとして行動をともにする時間が増えた事に比例していたとも言えるのだけれど、“それだけじゃない”事を僕はつい最近、観念して認め始めている。

『ありがとうーーーありす君』

あの時の文香さんの姿が忘れられない。
本番直前にうずくまってしまった、思っていたよりもずっと小さくて華奢な背中や
横になっている時の簡単に壊れてしまいそうな細い肢体
そして消えいるほど弱々しくも、恐るようにたどたどしくも、自分を信じてくれた瞳の色。
全て、鮮明に色濃く目蓋に焼き付いている。
繰り返し、繰り返しその光景を想う。
16/12/10(土)04:22:26 No.392085680
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キタ━━━(゜∀゜)━━━!!
16/11/21(月)03:22:40 No.392085895
ひょっとして、自分のこの気持ちは……“そう”なのだろうかと思い至った時
ありすはその仮定を否定する材料の方が少なくて、困ってしまった。

論破どころの話ではない。

認めるしかないではないか。
橘ありすは、生意気にも、このヒトの事を、他の誰でもない自分の手で護りたいと思っているのだということを。

φ

奏さんは飲み物を買いに行くと言って部屋から出て行ってしまった。
今はこの広すぎる空間に、自分と眠った文香の二人きりだ。
自分が何をしようと、眠っている文香を含めて、誰一人関知するところではない。
16/11/21(月)03:23:28 No.392085928
(……僕が悪い男だったら、文香さんは泣いているところでしたよ。)

とか、よく分からない理論武装でありすは自分と文香の間に一線を引いた。
そうでもしないと、今も自分の耳に細い息を吐きかけるこの小さな唇に触れてしまいそうだったのだ。

刺激されるのは耳だけでない。量も長さも人並み以上の文香の髪からは春を覚えはじめたありすの脳を貫通するような芳しく濃い匂いがする。(なんというシャンプーだろうか。そういった銘柄に拘りや見識はなさそうであるが…)
ただでさえ、右肩になんだか当たっているような気がする弾力に意識を持って行かれそうだというのに。
……まったくこの人は、どうしてこうなのだろう。

「……文香さん」
16/12/10(土)04:22:26 No.392085680
1479665893481.jpg-(269965 B)
キタ━━━(゜∀゜)━━━!!
16/11/21(月)03:24:45 No.392085981
試しに名前を呼んでみるも反応はなく、文香は規則正しい寝息を立てるばかりだった。

「ーーー文香さん」

もう一度、噛みしめるように彼女の名前を口にする。
やはり返事はなく、彼女の疲労を溜め込んだ身体はその意識を混濁の中に沈めたまめ浮き上がらせようとはしない。
もしかして、このままずっと彼女が目覚めないのではないかという馬鹿な錯覚さえ覚えそうだ。ーーーそれは、困る。

ふと視線を落とすと、つい数分前まで文香が船を漕ぎながら目を落としていた分厚い本が目に入る。
二段組みのハードカバー。電子書籍に慣れ親しんでしまった自分には、その装丁を見るだけで気後れしてしまうような代物なのだが、文香はまるでそれを息をするように読破していく。
しかも急いで読んでいるという風ではなく、本当にそれが身体の一部であるかのように自然に消化し、身体に取り込んでいくのだ。
16/11/21(月)03:26:14 No.392086038
彼女をそれほどまでに魅了する「書」という文化を、少しでも理解したいとありすが思ってしまうことは必然であった。

何冊か文香のオススメをそれとなく聞き出したありすは、タブレットでまずそれらの概要(また、作者の来歴など)を洗った。
いの一番に紙の本に手を出して、一気に読破するというのがそれはもちろん理想ではあるのだが
しかし今の自分がいきなり文学の世界へ飛び込んで、その感想を文香に話したとして、それでは小学生の読書感想文となんら変わらない。
ありすが望むのは、文香と同じ目線で同じ物を嗜み、彼女に認めてもらうことなのである。
そのためには、まず多くの見識を得てから実際の書物との直接対決に臨むべきなのである。
ーーーと、少なくともこの時点でのありすはそのように固く信じていた。
16/11/21(月)03:26:59 No.392086072
さて、そうやってありすが蒐集した情報の中に、ひどくありすの心を捉えたものがあった。

それは、ハッキリ言えば創作作品の内容とは別のところにあった文言であったのだが
それでもありすはきっとこの一節を一生忘れないような気がしていた。
そしてたぶん、文香もきっとこの言葉を知っていて、自分と同じように一生忘れないのだと思った。
だから、強く惹かれたのかもしれない。
この言葉を目にした時、真っ先に彼女が隣にいる景色を、思い描かずにはいられなかったのだから。
16/11/21(月)03:30:43 No.392086224
「月が、綺麗ですね…」

声に出ていた。しまった、と思った。
今はようやっと空が陰りはじめただろうかという頃合いで、いかに高層な美城ビルといえど、まだ月などまともに見えようはずがない。
要するに、今自分が口にしたのは状況に適してすらいない、平たく言えばただのナンパなのである。
今までにもまして冷や汗がぶあっと吹き出る感覚を覚えたありすだったが

「すぅ……すぅ……」

こうして時計の針のように少しも乱れずに刻まれる旋律を聞き、ホッと安堵して、胸をなでおろしてから

「ただいま、ありす君」
「わぁぁぁぁ!!」
16/11/21(月)03:31:30 No.392086245
心臓が口から発射されるんじゃないかと思った。
反射的に声をかけられた場所を見れば、ミネラルウォーターのボトルを片手に持った速水奏がドアを開けて戻ってきたところだった。
その表情はなんだか、穏やかながらもお宝を見つけ出した子供のような笑みを讃えており
ありすは思わず身構えながら言葉を慎重に選んだ

「おかえりなさい……あの、聞いてましたか」
「何をかしら?」

とぼけられたのかとも思ったが、奏は何かを察してはいても自分の言葉を一言一句聞いていた訳ではないといった様子であった。
だから、藪をつついて蛇を出すのはやめておくことにする。
自分からわざわざボロを出して弄られに行くこともあるまい。
そう思い、ありすは鼓動を押さえつけるために深呼吸をして

「……ありすくん……おはようございます」
16/11/21(月)03:33:24 No.392086304
心臓の次は腸がねじり飛ぶかと思った。
耳元、至近距離に吐息と声がかかったということもあって、身体中の毛が逆立つような緊張が電撃もかくやという速さで走るのを感じる。
声の主は当然、目を覚ました鷺沢文香であった。
肩にもたれかかっていた重みがスッと遠ざかっていく。名残り惜しさを感じずにはいられなかったが、そんな事を言っていられる心持ちでもない。

「お、おは、お、はようございまし…」

面白いように噛み倒す。
あああ、彼女の前だというのになんという情けない有様だろう。
こんな風にアドリブに弱いから、いつもあの二人にもいいようにからかわれるのだ……
というか、彼女の顔が見られない。もしこれで先ほどの妄言を彼女に万が一聞かれでもしていたら、それを怪訝に思う表情をしていたら……どうしよう?どうしたらいい?
16/11/21(月)03:35:04 No.392086380
橘ありすの脳内にさまざまな思いが去来していた。
しかし、その中にあっても尚、ありすの思考はシンプルでクリアな答えを、導くべくして導きだした。

「ちょっと、僕も何か買ってきます…!」

ーーー『気まずいので一旦逃げる』。
どれだけ事前に理論武装や大人びた振る舞いを身に纏ったとはいえ、こういうところではやはり年相応の振る舞いを見せてしまう自分を、ありすは心の底から恨めしく思った。

……あの言葉、ないしそれに準じる自らの気持ちを彼女に聞いてもらうことが出来るのは
やはり、もう少し先になってしまいそうだとーーーそう思った。
16/11/21(月)03:36:49 No.392086451
φ

「おはよう、よく眠ってたわね」
「……すみません」
「ありすくん、ずっと眠った貴女の肩枕になってくれてたのよ」
「そう……ですか……後で、きちんとお礼を言わないといけませんね…」
「文香」
「……あぁ、ええと、はい、なんでしょうか奏さん」
「大丈夫?」
「……大丈夫とは」
16/11/21(月)03:37:31 No.392086475
「顔………真っ赤よ? フフ」

「ーーーぁ」
fin.
16/11/21(月)03:40:05 No.392086556
憧れのお姉さんいいよね…
16/11/21(月)03:41:58 No.392086622
お姉さんも満更でもない
16/11/21(月)03:52:46 No.392087058
後半を巻きすぎた
反省
16/11/21(月)04:22:19 No.392088027
いい…
16/11/21(月)04:36:19 No.392088412
いい…
16/11/21(月)04:38:22 No.392088471
綺麗なありふみだ…
16/11/21(月)07:40:02 No.392094230
いい…
16/11/21(月)07:51:48 No.392094935
いいよね…
16/11/21(月)07:56:36 No.392095217
がんばれ12歳
16/12/10(土)04:22:27 No.392085680
1479665893481.jpg-(269965 B)
キタ━━━(゜∀゜)━━━!!


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