SS「いつもの軽い地雷原」地雷を踏み抜いた瞬間が自覚できることがあ - いもげばこ−二次元裏img@ふたば過去ログ保管庫


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16/11/24(木)01:13:53 No.392631607 del
SS「いつもの軽い地雷原」

 地雷を踏み抜いた瞬間が自覚できることがある。
「どうしましょう、これ」
「どうするもこうするも」
 アッサムとナオミは、椅子を寄せ合い頬をほとんど接触させるほどに近づいて、声をひそめて相談していた。
 その背後では、テーブルをはさんでノンナが滔々となにごとかを語っている。
「カチューシャはオビ川のように恵みを分け隔てなく与えてくれるのですが、時にシベリアの永久凍土のように峻厳で……」
 表情こそいつもとさして変わらないが、まくしたてる弁舌には熱がこもり、アッサムとナオミのあからさまな態度も目に入っていないようだ。
16/12/08(木)03:21:17 No.392631607
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キタ━━━(゜∀゜)━━━!!
16/11/24(木)01:14:13 No.392631665
 聖グロリアーナ、サンダース大付属、プラウダの三校の副隊長兼砲手によって、不定期に開かれる連絡会という名のお茶会は、ホスト役をまわり持ちにしている。負担を集中させないというのが建前だが、実のところは目先を変える意味合いの方が大きい。
 夏が過ぎ秋を迎え、あまり長くないこの季節を見せたいという希望もあり、今回はノンナが自ら招待役を買って出て、プラウダ高校の母港のある青森県大湊に三人が集った。
 なにしろ奔放な隊長をいただいている面子だ、副隊長同士集まれば冗談まじりながらも愚痴のひとつやふたつ口をつく。
 ところがエピソードを披露するのはもっぱらアッサムとナオミで、こうした話題の際、ノンナはえてして聞き役に徹している。
「でも、実際のところ、どうなんです。あなただって、カチューシャのことでいいたい話もあるんじゃないの?」
 途端ノンナの目の色が変わった。
 アッサムは瞬時に自分が足を踏み入れてはいけない領域を侵してしまったことを知ったが、すべては後の祭りだった。
 ノンナによる大カチューシャ賛辞はそれから半時間ほど続いた。
16/11/24(木)01:14:30 No.392631713
「あなたの隊長への献身ぶりは、相変わらずね」
 いくらなんでもしゃべり過ぎたらしい、喉が涸れてきたところでおかわりを注文し、ようやくノンナの長広舌は止まった。
 なかば感心してなかばあきれて、ナオミがついつぶやいた。
「無論です。私はカチューシャを支えるためにいるのですから」
 それを額面通り受け取り、当然のように返してくる。
「まあ、でもカチューシャさんなら、多少はかまいたくなる気もわかるわね。ダージリンなんてかまったって甲斐がないんですもの」
「わかるわ。うちのケイ隊長だって、そういう点では愛嬌がないから」
「なんだかカチューシャが頼りないといっているように聞こえますが」
16/12/08(木)03:21:17 No.392631607
1479917633010.jpg-(30262 B)
キタ━━━(゜∀゜)━━━!!
16/11/24(木)01:14:46 No.392631764
「まさか」
「どの高校でも、戦車道チームを引っ張っているリーダーは大抵モンスターよ。そこらを見誤るほど私らの目は節穴じゃないって」
 笑いながらではあるが、アッサムもナオミも目は真剣そのものだ。そのあたりの気持ちはノンナも痛いほどよくわかる。
「いうなれば、頼ってくれるひとと、頼ってくれないひとの差よ」
「ダージリンさんもケイも、独立独歩だから。務めとして部下にまかせることはあっても、私的にそれを持ち出さないわ」
「だからときどき思うのよ。カチューシャさんみたいにふるまえる隊長がうらやましいって」
「ケイが、プラウダの隊長みたいなこといってきたら、ちょっと珍しすぎてメモにとっちゃうわね」
「ダージリンでしたら、メモどころか動画に記録しておきますわ」
「別段、そんな特別なことでなくとも、記録しておりますが」
『え?』
 アッサムとナオミの声が重なったとき、ちょうどノンナの頼んだおかわりが運ばれてきた。
16/11/24(木)01:15:02 No.392631816
「はい、『カチューシャ日記』は日課ですので」
 湯気のたつ緑茶を涼しい顔をしてノンナは口に運ぶ。
「まさか、カチューシャさんの毎日を記録しているの?」
「ええ」
 アッサムは一度ノンナからナオミに視線を移し、なにごとかアイコンタクトをとってうなずき合った後、再びノンナにもどした。
「それは、私たち相手でしたらまだしも、あまり外でいわない方がいいわよ」
「何故です。記録があれば変化にいち早く気づけますし、万一の際の対策を講じることもできます。万事に備えるのは副官の当然の義務でしょう」
「いや、そこはそうでしょうけど、なにごとにも限度が……」
「もちろん、カチューシャのプライバシーには踏み入らぬよう、細心の注意を払っております。危ういところでは、自分の頭を打って記憶を……」
 いつになく強い勢いでノンナは喰ってかかる。
「待ちなよ。別にアッサムも、ノンナの献身に異議を唱えているわけじゃないよ」
 ナオミはカップを手にして助け舟を出した。普段は眉をひそめてしまうアメリカンコーヒーだが、このときばかりはナオミだけでなく、香りもなにもあったものではないそんな飲み物にさえ感謝を捧げたくなった。
16/12/08(木)03:21:17 No.392631607
1479917633010.jpg-(30262 B)
キタ━━━(゜∀゜)━━━!!
16/11/24(木)01:15:20 No.392631853
「ただ、あなたのカチューシャへの態度は誤解を招きやすい。だからだれかれ構わず、それを表明すると、いらぬ誤解を深めると念を押しているのよ」
 ノンナはアッサムとナオミを交互に見比べる。ふたりとも真摯にその眼差しを正面から受け止め返してくれた。すると落ち着きが戻ってきたらしく、居住まいをただしてわざとらしい咳払いをひとつする。
「わ、私も……」
 珍しくいいよどみ、
「私もこんなことを打ち明けるのは、あなた方ふたりだからこそです」
 さらに珍しく、ほんの少しだけ、頬を桜色に染めてつぶやいた。
 気遣わしげに小さく体を揺らせば、身長もやや縮んだように映る。
「え、ええっと……。なんだかごめんなさい……」
 奇妙ないたたまれなさを覚えて、アッサムもつい自分でもなにを謝っているのかわからないなりに頭を下げてしまう。
「私もわるかったわ。アッサムを止められなくて」
「いつの間にか私がわるいことになってません!?」
 流れるようなナオミとアッサムの掛け合いは、そんな微妙な空気を転倒させてしまい、みなぎった緊張感は笑いに変わって、たまらず三人はだれからともなく吹き出してしばらく声をたてて笑い合った。
16/11/24(木)01:15:36 No.392631897
 しばらくたって、お互いのわだかまりも解けてくると、三人ともいつもの調子を回復した。
「でも、いったいいつからつけてるの、その日記って」
「さあ、もうずいぶんになりますからね」
 小首を傾げるくらいだから、本当に覚えていないらしい。
「すごい熱意ね。ちょっと想像もつかないわ」
「ナオミさんもアッサムさんも、そうはおっしゃいますが、おふたりにも身を焦がすほどに慕うお相手はいらっしゃるでしょう」
「それは、まあ……」
「ねえ……」
 ストレートにぶつけられて、ふたりともカップを口に運んで、動揺をごまかすのが精一杯だ。
16/11/24(木)01:15:53 No.392631946
「そんな方の日々の移り変わりを留めた記録は、得難い宝となるのですよ。まして、それまでどこにも存在しなかった自分の色が、ある日を境にぽつりとその記録に表れてくるように思えて、次第に疑い得ないほどに濃くなってきたことを知る瞬間の喜び。ああ、自分の奉仕が無駄ではなかったと報われる感激は、それこそ筆舌に尽くせないのですから」
 ノンナの顔つきはやはり終始一貫変化しないにもかかわらず、またもや熱を帯びてきていた。しかも、今回は前のものとは明らかに異なる、陶酔のにおいを強く持っている。
「いやあ、私は勘弁……」
「いいかも……」
 そんなノンナの熱気にあてられてついもらしたナオミの返答に覆いかぶさるよう、ぼそりとつぶやいたアッサムに、
『え?』
 今度はナオミとノンナの声が綺麗に重なった。
16/11/24(木)01:16:09 No.392631988
「おかしいでしょう! ナオミさんはともかく、ノンナさんまでその反応は!」
「いや、アッサムがいうと冗談に聞こえないから……」
 ノンナの分までナオミがこたえる。
「ちょっと、それはあんまりじゃない!?」
「そうですよ」
 しかし、ノンナも真顔で声を合わせてきた。
「私のカチューシャへの敬慕を冗談で片づけないでください」
「それフォローになってませんわよね!?」
16/11/24(木)01:16:24 No.392632026
「そうではなくて、我が校のチームにも、ひとり困った子がいるんです。奔放で豪放磊落なのが」
 ここで我を失っては取り返しがつかないと覚ったらしく、アッサムは努めて冷静な振る舞いを再現しようとする。随分と遅きに失しているが。
「ああ、あのクルセイダーのお嬢さん」
 大学選抜戦での共闘もあり、ナオミもノンナも聖グロリアーナにあまりいないタイプの少女を知っていた。
「はい。ローズヒップというのですが、これが手の掛かる子でして。なんとか、わが校の品格に馴染ませようと頑張っているのですが、なかなか成果が出なくて。それで、今うかがった記録という方法は、ひとつ活路を見出せるんじゃないかと考えたんです。決して邪まな気持ちなんかじゃないんですよ」
 かなり弁解がましく聞こえるのだが、そのあたり戦車乗りの情けで、ノンナもナオミも深くは追求しない。
16/11/24(木)01:16:40 No.392632076
「へえ、アッサムも苦労してるんだ」
 かわりにあたりさわりのない相槌で済まそうとしたのだが、
「そうなんです。まったくあの子ときたら……」
 ナオミは手で顔を覆いたくなった。
「廊下は走る。扉はノックもせずに開け放つ。聖グロリアーナの伝統と格式をまったく理解していないんです。まあ、それがかわいらしいといえばいえるんですけど。いえ、一般論ですよ。そういう調査報告があるから、ダージリンも私も、彼女に茶名を与えているんですから。でも、もう少しお上品にしてくれれば、せっかくいい素材を持っているのだから……」
 地雷を踏み抜いた瞬間が自覚できることがある。
 それは何気ない場所に、何気ない顔をして転がっている。けれども触れた途端に違和感を知ることができる。
 知ったところで手遅れなのだが。
16/11/24(木)01:21:10 No.392632776
ノンカチュからのローサムいい…
通じるところがあるな
16/11/24(木)01:24:22 No.392633343
きたのか!
16/11/24(木)01:31:32 No.392634462
大体の地雷は踏んだだけで吹っ飛ぶからね…
地雷を踏んだと気付くのは吹き飛ばされてから
それはもう完全に手遅れ
16/11/24(木)01:37:26 No.392635522
ノンナさんの弁に熱が入っとる
16/11/24(木)01:38:33 No.392635737
アッサム様も気になるクルセイダー隊事情
というよりもローズヒップ事情
16/11/24(木)01:39:21 No.392635882
あるよね普段無口なのに得意な分野で早口になったり
16/11/24(木)01:39:25 No.392635895
期待はしているんだけどドンドン自由奔放になっていく
16/11/24(木)01:39:41 No.392635971
でももしかしたらこのスイッチはナオミにもあるのかもしれない
対象は人じゃないかもしれないけど
16/11/24(木)01:40:31 No.392636144
プロ同士多くは語らないが時には語りたくなる時もある
16/11/24(木)01:41:25 No.392636369
まるで関心がないのかと思いきや
本人的にはそうなれるように努力してるし入学当初と比べてみると確かに変化しているという
16/11/24(木)01:41:29 No.392636378
>あるよね普段無口なのに得意な分野で早口になったり
現状に満足しているように見えて実はたくさん望みを持ってる感じだ
16/11/24(木)01:43:18 No.392636705
関心はありまくるけどあの子の事を考えると無理に矯正するよりものびのびと育ってほしい感じなのかも…って保護者だこれ!
16/11/24(木)01:44:36 No.392636941
めちゃくちゃ関心あるじゃねーか!
16/11/24(木)01:45:25 No.392637086
近くで見ているから微々たる変化に気づきにくいのかもしれない
変化してないのかもしれない
もどかしい…
16/11/24(木)01:46:11 No.392637256
あなたたちだから話したんですよってノンナさん可愛い!
16/11/24(木)02:01:31 No.392640065
カチューシャのプロ…
16/12/08(木)03:21:17 No.392631607
1479917633010.jpg-(30262 B)
キタ━━━(゜∀゜)━━━!!


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